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横浜地方裁判所 平成7年(行ウ)15号 判決

神奈川県川崎市宮前区土橋六丁目二番地三

原告

柴原健三

右訴訟代理人弁護士

辰口公治

小川征也

神奈川県川崎市高津区久本二丁目四番三号

被告

川崎北税務署長 佐藤順一

右訴訟代理人弁護士

池田直樹

右指定代理人

小尾仁

渡部義雄

西田勝文

中澤彰

栗原勇

海谷仁孝

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が平成四年二月二一日付けでした原告の昭和六三年分所得税についての更正処分(ただし、平成六年九月二六日付けでされた減額更正処分後のもの。)のうち納付すべき税額一一〇五万七九〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、平成六年九月二六日付けでされた過少申告加算税の変更決定処分後のもの。)を取り消す。

第二事案の概要

本件は、被告が、平成四年二月二一日付けでした原告の昭和六三年分の所得税に係る更正処分(平成六年九月二六日付け減額更正処分により一部取り消されたもの。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(平成六年九月二六日付けでした変更決定処分により一部取り消されたもの。)について、原告が、財産分与を原因としてした不動産の譲渡は、実質は贈与であり、譲渡所得税の課税対象にはならないとして、右更正処分のうち税額一一〇五万七九〇〇円を超える部分及び右過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めたものである。

なお、以下昭和六三年法律第一〇九号による改正前の所得税法を「所得税法」と、租税特別措置法を「措置法」と、昭和六三年法律第一〇九号による改正前の措置法二五条の二を「措置法二五条の二」と、昭和六三年法律第一〇九号による改正前の措置法三一条を「措置法三一条」と、平成三年法律第一六号による改正前の措置法三一条の五を「措置法三一条の五」と、昭和六三年法律第一〇九号による改正前の措置法三二条を「措置法三二条」と、国税通則法を「通則法」とそれぞれ略称する。

一  争いのない事実等(末尾に証拠等の記載がないものは、当事者間に争いがない。)

1  原告は、昭和四四年一一月一四日絹子と婚姻し、昭和四六年二月八日長女貴子、昭和五〇年二月五日次女由香をもうけた。しかし、原告は、その後絹子と不仲となり、昭和六二年横浜家庭裁判所川崎支部に、絹子との間の夫婦関係調整の調停を申し立てた。その結果、原告と絹子との間に、昭和六三年九月一九日、以下のとおりの調停が成立した(以下「本件調停」という。)。

(一) 原告と絹子は調停離婚する。

(二) 原告らの長女貴子、二女由香の各親権者を絹子と定め、同人において監護養育する。

(三) 原告は、絹子に対し、本件離婚に伴う慰謝料、養育費を含む財産分与として、別紙物件目録(一)の一、二記載の土地、建物(以下「本件不動産」という。)、同目録三記載の預金、国債のそれぞれ二分の一及び同目録四記載のリゾートマンションの会員権を譲渡する。

2  原告は、平成元年三月一三日、みなし法人課税選択の取りやめの届出書を被告に提出したが、同届出書には、昭和六四年分の所得税から、みなし法人課税の適用を受けることを取りやめる旨及びみなし法人課税の適用を取りやめる事情として、昭和六三年九月二八日付けで不動産所得の規模が事業的から非事業的規模になった旨記載されていた。したがって、原告の昭和六三年分の所得税について、みなし法人課税の対象となる期間は、昭和六三年一月一日から同年九月二八日までとなった(乙第三号証、弁論の全趣旨)。

3  原告は、平成二年三月一四日、昭和六三年分の所得税の修正申告書を被告に提出したが、右申告書には、右みなし法人課税が適用される期間の変更に伴い、配当所得の金額を一二三万五一九〇円減額し八六二万一五七〇円とし、新たに不動産所得の金額三二〇万一二三〇円を加算し、それに伴い申告納税額を一一〇五万七九〇〇円(新たに納付すべき申告納税額五万二九〇〇円)と修正した金額が記載されていた。しかし、原告は、本件不動産の譲渡については、課税の対象にならないものと判断し、これを記載しなかった(乙第四号証の一ないし四、弁論の全趣旨)。

4  被告は、本件不動産の譲渡が譲渡所得税の対象になるとして、原告に対し、平成四年二月二一日付けで、総所得金額を一七二〇万七八〇〇円、分離長期譲渡所得の金額を二九億三九八四万〇八五〇円、納付すべき税額を八億八三八六万二八〇〇円とする更正処分及び過少申告加算税の金額を一億三〇三二万六〇〇〇円とする賦課決定処分をした。

5  その後、原告の弟の実と絹子、株式会社さくら銀行及び三銀保証キャピタル株式会社との間で争われていた原告の父幸三の遺産相続に係る所有権移転登記更正登記等請求事件(東京地裁平成元年(ワ)第四七四九号)において、当事者及び利害関係人として参加した原告及び原告の兄良吉との間で、平成五年一二月一七日、原告が絹子に財産分与した本件不動産のうち、別紙物件目録(一)の一の2及び9記載の土地並びに同目録(一)の二の1及び2記載の建物は実が、同目録(一)の一の5記載の土地は良吉がそれぞれ相続する旨の訴訟上の和解が成立し、平成五年一二月二七日、これらの不動産について、絹子が経由した所有権移転登記の抹消登記手続がされた。その結果、絹子が本件財産分与として取得した財産は、(1) 別紙物件目録(二)の一記載の土地(以下「本件土地」という。)及び同目録(二)の二記載の建物(通称バンブービル、以下「本件建物」という。)、(2) 別紙物件目録(一)の三記載の各預金、国債のそれぞれ二分の一、(3) 別紙物件目録(一)の四記載のリゾートマンションの会員権となった。

また、原告と絹子との間で、絹子は、原告の川崎市中央農業協同組合に対する借入金四八三九万六一二一円(以下「本件債務」という。)を引き受ける旨の訴訟外の和解が成立した。

6  そこで、原告は、被告に対し、右和解に伴う更正の請求をしたところ、被告は、原告に対し、平成六年九月二六日付けで、総所得金額を一七二〇万七八〇〇円、分離長期譲渡所得の金額を一六億七三六九万八九〇〇円、納付すべき税額を五億〇四〇二万〇二〇〇円とする減額更正処分及び過少申告加算税の額を七三三四万九〇〇〇円とする変更決定処分をした。

7  原告は、これを不服として、平成四年四月一四日被告に対し異議申立てをしたが、同年七月九日付けで棄却されたので、同月二八日国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、平成七年三月一日付けで棄却され、そのころその通知を受けた。

二  争点

本件争点は、被告が平成四年二月二一日付けでした前記所得税更正処分(平成六年九月二六日付け減額更正処分により一部取り消されたもの、以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(平成六年九月二六日付けでした変更決定処分により一部取り消されたもの、以下「本件賦課決定処分」という。)の適法性であるが、具体的には、原告から絹子に対する財産分与としての本件土地の譲渡が譲渡所得税の対象になるかどうかである。これについての双方の主張は以下のとおりである。

1  被告の主張

(一) 財産分与に関し、当事者間の協議等が行われてその内容が具体的に確立され、これに伴い金銭の支払、不動産の譲渡等の分与が行われると、財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがって、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者はこれによって分与義務の消滅という経済的利益を享受したものといえるから、財産分与に係る不動産の譲渡は、譲渡所得課税の対象になるものというべきである。本件の場合、横浜家庭裁判所川崎支部において、双方の委任した弁護士が関与した上で調停が成立し、しかも、本件調停調書においては、「本件離婚に伴う慰謝料、養育費を含む財産分与として次のものを譲渡する」と明確に記載されているのであるから、本件の財産の譲渡が財産分与としてのものであることは明らかである。このことは、そもそも財産分与が当事者の協議により任意に定め得ることや、個々の財産分与について、課税庁がその相当額を算定することが困難であることからも明らかであるし、また、仮りに、離婚に応じない相手方に譲渡するため等の理由で増額した部分が財産分与とは性質が異なると解されたとしても、それは和解金相当分であり、その代物弁済として資産の移転があることになるから、その部分はやはり譲渡所得税課税の対象となるものというべきである。

(二) 原告は、離婚の財産分与として相当な価額を超える部分は贈与と解すべきであるとして、本件離婚の場合、財産分与相当価額の分与は、不動産以外の財産の分与によって充足されるから、不動産部分の分与は贈与と解すべきであると主張する。しかし、原告の主張する財産分与相当額なるものは、原告が本件訴訟において独自に想定し主張しているものであり、本件調停において当事者間で検討されたものでもなく、根拠がない。加えて、本件の場合、絹子は事業専従者として原告の事業の手伝いをしていたものであり、また、原告と絹子の婚姻関係が破綻したのは、原告の女性問題(後に原告と婚姻した加瀬美代子との不貞関係)に原因があったのであり、その責任は主として原告の側にあったものであるから、本件財産分与の額は不相当に高額なものでもない。

(三) ところで、財産分与として資産が譲渡された場合、当事者は当該資産を時価相当額の経済的価値のあるものとして譲渡するものと解されるから、譲渡所得の金額は、分与者に右資産の時価相当額の経済的利益の収入があったものとして、財産分与時の資産の時価相当額を基準に判断すべきである。本件の場合、本件土地及び本件建物が財産分与を原因として絹子に移転されているから、本件財産分与に係る譲渡収入金額は、本件土地及び本件建物の本件財産分与時の時価相当額となる。しかして、本件土地の本件財産分与時の価額は、川崎市宮前区に存在する基準地(国土利用計画法施行令九条一項参照)及び公示地(地価公示法二条一項参照)のうち、本件土地の存在する地域と地勢の状態、地理的位置関係及び宅地の利用状況等が概ね同一と認められる地域に存在する基準地一及び二の各価格(標準価格及び公示価格)をもとにし、右各価格を本件財産分与が行われた昭和六三年九月現在に時点修正して算定すると、別表二のとおり、一七億四九一八万円と認められる。また、本件建物の本件財産分与時の価額は、原告の昭和六三年分の所得税の確定申告書添付の青色申告決算書(不動産所得用)の減価償却明細書に記載されている昭和六三年九月末日現在の未償却残高六五〇五万一四五〇円である。そこで、これらをもとに、原告の納付すべき所得税額を計算すると、別表一の(1)記載のとおり、五億〇六一〇万五八〇〇円となり、本件更正処分に係る納付すべき所得税額五億〇四〇二万〇二〇〇円は右金額の範囲内であるから、本件更正処分は適法である。

(四) 以上のとおり、本更正処分は適法であるから、これを前提としてされた本件賦課決定処分も適法である。

2  原告の主張

(一) 所得税法は財産分与に対する課税に特別の定めはしていない。財産分与は多義的な要素を含むものであり、これを統一して規定することは不可能であるからである。しかし、所得税法は、個人間の資産譲渡について有償か無償かの別によって課税の区別を設けているから、財産分与についても有償か無償かを区別し、そのいずれをも含んでいる場合は、有償の部分と無償の部分とを特定し、有償の部分には譲渡人に対し所得税を、無償の部分には譲受人に対し贈与税を課税することになる。すなわち、財産分与については、離婚する夫婦の共有財産の清算、慰謝料、扶養という本来的な要素のほかに、例えば、離婚に応じない相手の気持を和らげるためや、離婚の不当な引延ばしを避けるために財産分与の名目で資産を譲渡することもあるから、財産分与として相当である部分とこれを超える部分とを区別し、後者についてはこれを贈与とみるべきである。相続税法基本通達九-八但書きが、「分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる当該過当である部分は(中略)贈与によって取得した財産となる」と規定するのも、このような考え方によるものと考えられる。そこで、本件において、財産分与として相当な価額がどの程度かについてみると、以下のとおりである。

(1) 夫婦の協力によって築いた財産の清算分

原告は、婚姻当時、国鉄に勤務し、その後、退職して不動産賃貸業を営んだが、離婚時に所有していた財産は、すべて父祖よりの財産とその果実であって、婚姻中、絹子が自分の特有財産を提供するとか自分の労力を提供するとかして、財産を増やした事実は全くない。絹子は、原告の昭和五八年以降の確定申告上、事業専従者とされているが、税務対策上そうしただけで、実際は原告の仕事に一切従事していない。したがって、財産の清算分は零である。

(2) 扶養分

扶養費は一般に標準生計費を目安として自活するために必要な期間(一般には三年)を基準として算定すべきとされている。そこで、この一般基準に従い、昭和六三年の平均的生計費一か月約一〇万円を基準に、これを三年間支払うものとすると三六〇万円となる。

(3) 慰謝料

原告と絹子夫妻の婚姻関係が破綻したのは、性格の不一致と結婚生活に対する双方の考えが根本的に異なるところにあったが、同居していた原告の父や兄の面倒をみないなど、強いていえば絹子の方により多く非難すべき点が存在した。したがって、原告から絹子に対する慰謝料の支払義務はない。絹子は後に原告の女性問題を取り沙汰するようになったが、これは離婚を有利に導くためであり、原告が後に婚姻することとなった加瀬美代子と性的関係を持つに至ったのは、昭和五九年ころ、絹子との不和により家庭内別居となり、昭和六二年四月ころ、原告が家を出たさらに後のことである。仮りに原告に何らかの慰謝料支払義務があるとしても、夫婦関係の破綻原因には、双方の性格、人生観、生立ち等複雑多岐な要素が微妙に関係してくるため、いずれが悪いかの判定は非常に難しく、本件においても、原告だけに非があるものとはいえない。

(4) 養育費

原告の支払うべき養育費は、成人するまで(原告の子供は二人とも女子なので短大卒を目安とする。)一人につき一か月一〇万円程度と考えられる。したがって、長女貴子については昭和六三年一〇月から平成三年二月までの二九か月間で二九〇万円、二女由香については昭和六三年一〇月から平成七年二月までの七七か月間で七七〇万円の合計一〇六〇万円となる。

以上のとおり、本件の場合、財産分与としての相当価額は、養育費を含めて約一四二〇万円程度であり、これは、本件調停成立時の本件不動産以外の財産の価額(約二〇〇〇万円)によって十分に充足される。したがって、本件資産譲渡のうち、不動産部分はすべて相続税法基本通達九-八但書きにいう過当部分であり、贈与とみるべきである。

なお、原告としても、調停申立てから一年近く経ても決着がつかなかったので、早期に離婚を成立させるためには、絹子の気持を和らげ、その気がすむように金銭的に大幅に譲歩するしかなく、しかも、いずれ財産は子供たちのものになるとの考えから、本件不動産(原告所有不動産の概ね二分の一)ひいては本件土地及び本件建物を絹子に贈与するという気持で本件調停の合意に達したものである。

(二) 被告は、財産分与の内容は当事者間の協議で任意に定め得ると主張するが、課税の対象範囲を自由に定めることはできないのであり、有償譲渡か無償譲渡かは、民法の基準に照らし客観的に判断されなければならない。もっとも、通常は、財産分与の協議は民法七六八条三項に定められた諸事情を考慮して決められるものであろうが、本件調停においては、その全経過を通じて、双方とも、財産分与としてどの位が相当かという観点からの検討は全く行っていないのであり、前述のように、原告は譲渡する財産のうちの大部分を実質上贈与と考えていたものである。なお、原告は、本件調停の申立てを依頼した弁護士からも、本件の財産分与により原告の方が課税されることはない旨の説明を受けていた。また、被告は、離婚に応じない相手方に譲渡するため等の理由で増額した部分について、仮りにその部分が財産分与とは性質が異なると解されたとしても、それは和解金相当分であり、その代物弁済として資産の移転があることになるから、その部分はやはり譲渡所得税課税の対象となると主張する。しかし、このような解決を促すための財産譲渡に有償性を認めることは不合理であり、無償とみるほかはない。さらに被告は、課税庁において個々の財産分与についてその相当額を算定することは困難であると主張するが、それでは所得税法五九条一項一号及び相続税法基本通達九-八但書きの趣旨を否定するものであり、失当である。

第三争点に対する判断

一1  所得税法は個人間の資産譲渡については有償譲渡と無償譲渡とを区別し、無償譲渡については課税しないこととし、その代わり、無償譲受人は当該資産を譲渡人の保有期間中も引き続き所有していたものとみなし(六〇条一項)、将来これを他に有償譲渡した時には、前所有者の保有期間中に生じていた値上がり益も含めて課税の対象とするものとしている。ところで、離婚に伴う財産分与の権利義務そのものは、離婚の成立によって発生し、実体的権利義務として存在するに至るが、その内容は、当事者の協議、家庭裁判所の調停若しくは審判又は地方裁判所の判決をまって具体的に確定される。そして、財産分与に関し当事者間の協議等が行われてその内容が具体的に確立され、これに伴い金銭の支払、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができるから、財産分与として不動産等の資産が譲渡された場合、分与者はこれによって分与義務の消滅という経済的利益を享受したものといえる。したがって、財産分与としてされた資産の譲渡は、分与者に分与義務の消滅という経済的利益をもたらすものである以上有償譲渡であり、譲渡所得税の対象となるものというべきである。換言すれば、財産分与としてされた資産の譲渡といえども、それが仮装としてされたり、錯誤に基づく無効のものであったり、諸般の事情から明らかに過大な資産譲渡がされたりしたような場合は、分与義務の消滅を伴うものではないから、有償譲渡とみることはできず、譲渡所得税の対象とはならないものというべきである。

そこで、本件について、このような事情の有無についてみるに、前記争いのない事実と証拠(甲第二号証の一、二、第三、四号証、第六号証の一ないし一八、第九号証の一ないし三、第一〇号証の一ないし一五、第一九号証の一ないし四、第二〇号証、乙第七ないし第一八号証、第二九、三〇号証、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 原告は、昭和一六年四月二八日、川崎市宮前区土橋六丁目二番地三(六-二-三、以下、本文中の地番は、このように表記する。)において、農業を営む父幸三、母キヌの三男として生まれ、昭和三五年六月国鉄職員となった。原告には、兄の良吉と弟の実がいたが、良吉は知恵遅れで、実家で仕事もせずにおり、一方実は幼少時から他家の養子に行き、実家にはいなかった。原告は、昭和四四年一一月一四日絹子と婚姻し、川崎市宮前区土橋四-三-一に新居を構え、昭和四六年二月八日長女貴子をもうけたが、昭和四七年一月キヌが交通事故で急逝し、実家に幸三と良吉が残されたため、一家で実家に移り住むようになった。そして、原告は、昭和五〇年二月五日、二女由香をもうけた。

(二) 原告は、昭和五三年一〇月国鉄を退職し、本格的に不動産賃貸業に専念するようになった。すなわち、原告は、昭和四三年に祖父の彦七から贈与を受けた川崎市宮前区土橋四-三-一、同四-三-一九を所有し、このうち土橋四-三-一に自宅を所有し他に賃貸していたほか、昭和五三年五月幸三から無償で借り受けた川崎市宮前区土橋六-一-九、同六-一-一〇の土地上に事務所・倉庫を新築し、これを東京中央食品株式会社に賃貸し、さらに、同年六月幸三から贈与を受けた川崎市宮前区土橋七-一-三のアパート(幸福荘)を所有して、これらの賃貸業務に従事し生計を立てるようになった。そして、原告は、幸三が昭和五八年二月一九日死亡したことにより、川崎市宮前区土橋二-一七-八の土地外一五筆と同二-一六-一六、同二-一六-一七にあるスタジオ二棟(株式会社第一映像センターに賃貸)を相続した。そして、原告は、昭和六二年一月、川崎市宮前区土橋六-二-二五、同六-二-二六の土地上に店舗・共同住宅を建て、これを他に賃貸し、約二〇九三万円の年間所得を得ていた。こうして原告は不動産賃貸業を営んできたが、絹子は婚姻以来一貫して専業主婦で、形の上ではある時期から原告の確定申告上、事業専従者となっていたが、実際には原告の不動産賃貸業を手伝うことはほとんどなかった。

(三) 原告と絹子との夫婦仲は当初円満に推移したが、一家が実家に移り住んで、幸三、良吉と同居するようになってとかく波風が立つようになった。その原因は、幸三らとの同居に対する夫婦の考え方の違いにあり、原告がいわば柴原家の跡取りとして、幸三や良吉の面倒をみ、元来の農家として近所との交際も欠かさないようにしなければならないという考えでいたのに対し、絹子は夫婦と子供だけの生活を望み、幸三と良吉の面倒をみることや、近所と交際することを好まなかった。原告と絹子の軋轢は、幸三が死亡して以降、良吉との同居を巡って一層激しくなり、それにつれて原告の生活態度が乱れるようになり、絹子ら家族と食事を共にしなくなったり、夜遅く帰宅したりするようになった。そして、やがて二人は、昭和六〇年ころから、家にいても互いに口も利かないようになったが、昭和六二年春ころ、偶然のことから原告が当時交際していた加瀬美代子宅に外泊していた事実を絹子が知るところとなり、原告は、同年四月ころ、家を出て横浜市港北区南山田の飯場で暮らすようになった。原告は、その後間もなく、絹子と離婚し加瀬美代子と婚姻する決意を固め、同年八月横浜家庭裁判所川崎支部に夫婦関係調整の調停申立てをして、絹子に離婚を求めるに至った。原告は、同年九月から川崎市高津区野川のマンションを賃借して住むようになったが、翌一〇月には、右マンションから自動車で約五分の距離にある同区梶ヶ谷二丁目に加瀬美代子も転居してきた。

(四) 原告は、調停の開始当初からどうしても離婚したいという態度に終始したのに対し、絹子は、自分のこれまでの対応にも非があったと反省しつつ、離婚する意思はないとして原告の離婚の申出に応じようとせず、調停は平行線をたどった。原告は、調停期日も回を重ね、調停申立てから一年近く経っても決着がつかないため、金銭的に大幅に譲歩するしかないと考え、絹子に所有する不動産のほぼ二分の一を目録にして示し、全財産の半分を渡すので離婚に応じてほしいと申し入れたところ、弁護士の助言もあり、絹子もこれに応ずる態度を示すようになり、離婚を前提に、双方の代理人弁護士を含めた中で、原告が絹子に財産分与としてどの程度の資産を譲渡するかの検討が行われた。右検討の過程で、離婚原因に原告の女性問題が含まれていることから、絹子の精神的苦痛が大きいことや、原告が資産家であったことから、離婚に伴う慰謝料も相当高額でしかるべきであるということで、分与財産の決定に当たっては、右の離婚に伴う慰謝料、絹子が今後扶養する子供二人が成人し婚姻するまでの養育費、絹子の婚姻期間中の家事労働等による貢献などが総合的に考慮され、その結果、原告は絹子に「本件離婚に伴う慰謝料、養育費を含む財産分与として譲渡する」として、本件不動産等を財産分与する旨の本件調停が成立した。右の検討過程で、本来の離婚に伴う財産分与は、本件不動産を除いたその余の分与財産で足りるなどとの話しが出たことは全くなかった。

(五) 右の調停成立の過程で、財産分与にかかる課税関係が問題となり、絹子の代理人弁護士から、財産分与による資産の移転は譲渡所得に該当し、分与者が税金を負担することになる旨の説明があったのに対し、原告の代理人弁護士が強くこれを否定するという場面があったが(原告本人にもその旨の説明をしていた。)、その後税金のことについて深く詮索することのないまま調停が進行し、最終的に双方の本人及び代理人弁護士出席の上で前記のような内容の合意が成立するに至った。絹子及びその代理人弁護士は、本件調停成立時、原告から絹子への財産の譲渡は、離婚に伴う財産分与であるという認識でおり、これが贈与であるという認識は全くなかった。その後、原告は、平成二年四月二七日加瀬美代子と婚姻した。

以上のとおり認められ、右認定に反する甲第九号証の一、第一二号証、第一八号証、原告本人の供述は、前掲各証拠に照らし、たやすく採用することができない。

2  右認定の事実によれば、本件財産分与は、調停離婚の際に、双方当事者のほか、両代理人弁護士が立ち会い合意したものであり、しかも、その調停においては、「本件離婚に伴う慰謝料、養育費を含む財産分与として譲渡する」として、本件不動産を含む財産が財産分与の対象である趣旨が明らかにされ、その旨調停調書にも明記されたのであるから、贈与に仮託してその合意がされたものとはいえない。もっとも、その対象とされた本件不動産のすべては、いわば原告固有の財産であり、その意味では夫婦共有の財産の清算という要素は乏しい上、分与された財産を金銭的に評価すると、後記のとおり、本件土地だけでも一七億円余りにも達し、一見、財産分与としては、不相当に高額であるかのようである。けれども、もともと財産分与としてどの程度財産を分与するかは、離婚に至る経緯、双方の資産状況、有責性、扶養の必要性等、それぞれの夫婦が置かれた立場、条件等により千差万別なのであり、平均的な金額と比較して高いからといって、一概に財産分与として不相当に高額であるとはいえない。本件の場合、前記認定のとおり、原告としては、従来から交際していた加瀬美代子という女性と婚姻したいがため、絹子との協議離婚を持ち出した経緯があり、原告と加瀬美代子との男女関係が生じた時期は、必ずしも判然としないが、原告と絹子との婚姻関係が破綻した後であるといえるかは問題のあるところで、もし調停離婚が成立せず、訴訟に持ち込まれた場合、勝訴するかどうかは微妙な情勢にあって、かなりの出捐を覚悟しても、絹子には是非とも離婚に応じてもらいたいという事情があったといえる。一方、絹子としては、原告の女性問題が発覚したこともあり、原告の離婚の意思が強く、やむなく離婚に応じざるをえない立場に置かれ、しかも、離婚後は家を出て、女手一つで子供二人を養っていかなければならない状況下に立たされることになったものであって、相当程度高額の慰謝料、扶養料を要求しうる立場にあったものである。そして、原告は、その所有する不動産の約半分を提供する旨申し出て、離婚についての絹子の了解を得、前記のような財産分与の合意に至ったのであるから、この合意は、主として、原告の絹子に対する慰謝料ないしは養育費を含めた扶養料の支払とみるべきものであるが、これによる分与財産は、これを金銭的に評価すればかなりの高額になるとはいえ、原告の総資産からすれば半分以下にとどまるものであるし、また、これについては、絹子の家事労働等、目に見えない形での資産維持のための貢献も考慮されている。さらには、本件は、もともと絹子において、離婚に応じなければならないほどの非があったとはいえず、主として原告の前述のような女性関係に起因する離婚意思が強いため、やむなく離婚を余儀なくされたものであり、その意味では原告に高額の慰謝料ないしは扶養料の支払義務が課せられてもおかしくない事案であったといえるなど、前記のような諸事情を勘案すれば、にわかにそれが財産分与として過大であるということはできない。したがって、原告は、これにより分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。

3  原告は、財産分与としての資産譲渡といっても多義的な内容を含み、離婚する夫婦の共有財産の清算、慰謝料、扶養という本来的な要素のほかに、例えば、離婚に応じない相手の気持ちを和らげるためなどの理由から財産分与の名目で資産を譲渡することもあるから、財産分与として資産の譲渡がされた場合は、これを、本来の財産分与としてされた譲渡部分とそうでない部分とに区別し、前者については有償譲渡として譲渡所得税の対象とし、後者については無償譲渡として譲受人に贈与税を課すべきであると主張する。この原告の主張は、財産分与に、本来的な財産分与の部分とそうでない部分があることを前提とするものであるが、このような概念を持ち出すことは、本来財産分与が当事者間の協議により自由に定めうるものであることと矛盾するものであり、たやすく採用することができない。原告は、このように解すると、相続税法基本通達九-八但書きが設けられた意味がなくなると主張するけれども、そこにいう「過当な部分」とは、前記のように、財産分与に仮託して資産の譲渡が行われたり、諸般の事情に照らし、明らかに過大な財産分与が行われたような場合を指しているものというべきであって、原告の主張するように、本来的な財産分与の部分と比較して過大な部分を指すものではないというべきであるから、原告のような考えを否定したからといって、右のような通達が設けられた意味がなくなるものではない。また、仮りに原告の主張するような本来的な財産分与の部分とそうでない部分の区別をするのが相当であり、またそれが可能であるとしても、本件の場合は、前記のように、そのすべてが本来の財産分与に当たるものというべきであり、本件不動産を除いた財産の譲渡が本来の財産分与であり、本件不動産ひいては本件土地及び本件建物の譲渡は贈与であると認めることはできないから、この意味からも原告の主張は採用することができない。

二1  ところで、財産分与として資産が譲渡された場合、当事者は当該資産を時価相当額の経済的価値のあるものとして譲渡するものと解されるから、譲渡所得の金額は、分与者に右資産の時価相当額の経済的利益の収入があったものとして、財産分与時の資産の時価相当額を基準に判断すべきであるということになる。本件の場合、本件土地及び本件建物が財産分与を原因として絹子に移転されているから、本件財産分与に係る譲渡収入金額は、本件土地及び本件建物の本件財産分与時の時価相当額ということになる。そして、証拠(乙第二一ないし第二五号証、第二六号証の一ないし六、第二七号証の一ないし七、第二八号証、弁論の全趣旨)によれば、本件土地の本件財産分与時の価額は、被告主張のとおり、川崎市宮前区に存在する基準地及び公示地のうち、本件土地の存在する地域と地勢の状態、地理的位置関係及び宅地の利用状況等が概ね同一と認められる地域に存在する基準地の価格をもとにして、右各価格を本件財産分与が行われた昭和六三年九月現在に時点修正して算定すると、別表二のとおり、一七億四九一八万円となることが認められる。また、証拠(乙第二〇号証の一ないし四、弁論の全趣旨)によれば、本件建物の本件財産分与時の価額は、原告の昭和六三年分の所得税の確定申告書添付の青色申告決算書(不動産所得用)の減価償却明細書に記載されている昭和六三年九月末日現在の未償却残高六五〇五万一四五〇円であると認められる。

2  そこで、これらの価額をもとに、証拠(乙第一号証の一ないし四、第四号証の一ないし四、第一八号証、第二〇号証の一ないし四、弁論の全趣旨)により、原告の昭和六三年分の所得税の課税標準、税額等を計算すると、別表一の(1)記載のとおりであると認められるが、その詳細は以下のとおりである。

(一) 総所得金額 一七二〇万七八〇〇円

右金額は、不動産所得の金額、配当所得の金額及び給与所得の金額の合計額であり、原告の修正申告額と同額である。

(二) 分離課税の長期譲渡所得の金額 一六億八〇六五万一〇〇〇円

右金額は、次の(1)の譲渡収入金類一七億七〇一八万円から(2)の取得費八八五〇万九〇〇〇円、(3)の譲渡費用二万円及び(4)の特別控除額一〇〇万円を控除した金額である。

(1) 譲渡収入金額 一七億七〇一八万円

右金額は、次の〈1〉及び〈2〉の金額の合計額である。

〈1〉 本件土地に係る譲渡収入金額 一七億四九一八万円

右金額は、財産分与として譲渡した本件土地の譲渡による収入金額である。なお、本件土地については、所得税法六〇条一項の規定に基づき、原告の父幸三の取得時期を引き継ぐことになるから、本件土地の譲渡による譲渡所得は、措置法三一条一項の規定に該当する長期譲渡所得となる。

〈2〉 河原正光に対する土地の譲渡収入金額 二一〇〇万円

右金額は、原告が河原正光に対して、川崎市宮前区土橋七-二八-一二の土地を譲渡した金額であり、原告の確定申告及び修正申告に係る分離課税の長期譲渡収入金額と同額である。

(2) 本件土地及び右土地に係る取得費 八八五〇万九〇〇〇円

右金額は、措置法三一条の五第一項本文の規定に基づき、前記(1)の〈1〉の譲渡収入金額一七億四九一八万円及び〈2〉の譲渡収入金額二一〇〇万円にそれぞれ一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額の合計額である。

(3) 譲渡費用 二万円

右金額は、河原正光に対し譲渡した土地の売買契約書に貼付した収入印紙代である。

(4) 特別控除額 一〇〇万円

右金額は、措置法三一条四項の規定に基づく金額である。

(三) 分離課税の短期譲渡所得の金額 〇円

右金額は、次の(1)の譲渡収入金額六五〇五万一四五〇円から(2)の取得費六五〇五万一四五〇円を控除した金額である。

(1) 本件建物に係る譲渡収入金額 六五〇五万一四五〇円

右金額は、原告が、本件財産分与として譲渡した本件建物の譲渡による収入金額である。なお、原告が本件建物を取得した日は、昭和六二年一月一四日であり、昭和六三年一月一日現在における所有期間は一〇年以下であることから、本件建物の譲渡に係る譲渡所得は、措置法三二条一項の規定に該当する短期譲渡所得となる。

(2) 本件建物に係る取得費 六五〇五万一四五〇円

右金額は、原告が平成元年三月一三日に、被告に提出した昭和六三年分の所得税の確定申告書添付の青色申告決算書(不動産所得用)の減価償却費明細書に記載されている本件建物の昭和六三年九月末日現在の未償却残高である。

(四) 納付すべき所得税額 五億〇六一〇万五八〇〇円

右金額は、次の(1)ないし(3)の金額の合計額五億〇七四八万二九六七円から(4)及び(5)の金額の合計額一三七万七一〇八円を控除した金額(通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

(1) 総所得金額に対する税額 四六五万五六〇〇円

右金額は、所得税法八七条二項の規定に基づき、原告の総所得金額一七二〇万七八〇〇円から所得控除の額の合計額八一万八二九〇円(原告の修正申告額と同じ。所得税法七二条ないし八六条)を控除した金額の一六三八万九〇〇〇円(通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に、所得税法八九条一項に規定する税率を乗じて計算した金額であり、原告の修正申告額と同額である。

(2) 分離課税の長期譲渡所得の金額に対する税額 四億九八八三万三九〇〇円

右金額は、原告の分離課税の長期譲渡所得の金額一六億八〇六五万一〇〇〇円(ただし、通則法一一八条一項の規定により、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)について、措置法三一条一項の規定に基づき、同項及び同法施行令二〇条一項の規定を適用して計算した金額であり、計算の経緯は、別表一の(2)記載のとおりである。

(3) みなし法人所得税額 三九九万三四六七円

右金額は、原告のみなし法人課税の対象となる不動産所得の金額二〇五〇万一八九円(原告の修正申告額と同じ。)について、措置法二五条の二の規定に基づき、同条二項一号の規定を適用して計算した金額であり、計算の経過は、別表一の(3)記載のとおりである。なお、右金額は、原告の修正申告額と同額である。

(4) 配当控除の額 四三万一〇七八円

右金額は、原告の配当所得の金額八六二万一五七〇円(原告の修正申告額と同じ。)について、所得税法九二条一項の規定に基づき、同項三号の規定を適用して計算した金額であり、原告の修正申告額と同額である。

(5) 源泉徴収税額 九四万六〇三〇円

右金額は、原告が源泉徴収の方法により納付した金額であり、原告の確定申告額及び修正申告額と同額である。

3  以上のとおり、原告が納付すべき所得税額は、五億〇六一〇万五八〇〇円となるところ、本件更正処分に係る納付すべき所得税額五億〇四〇二万〇二〇〇円は、右金額の範囲内であるから、本件更正処分は適法である。

4  原告は、昭和六三年分の所得税に係る課税標準及び納付すべき税額を過少に申告していたものであり、過少に申告したことについての通則法六五条四項に規定する正当な理由を認めるに足りる証拠もないから、同法六五条一項の規定に基づき、本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額四億九二九六万円(同法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てた後もの。)に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額四九二九万六〇〇〇円と、同法六五条二項の規定に基づき、本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額四億九二九六万二三〇〇円と累積増差税額五万二九〇〇円(修正申告に係る納付すべき税額一一〇五万七九〇〇円から確定申告に係る納付すべき税額一一〇〇万五〇〇〇円を控除したもの。)との合計額四億九三〇一万五二〇〇円のうち、期限内申告税額に相当する金額一一九五万一〇三〇円(確定申告に係る納付すべき税額一一〇〇万五〇〇〇円に源泉徴収税額九四万六〇三〇円を加えたもの。)を超える部分に相当する税額四億八一〇六万円(同法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に、一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額二四〇五万三〇〇〇円との合計額七三三四万九〇〇〇円が過少申告加算税となるところ、本件賦課決定処分に係る納付すべき過少申告加算税は、右金額と同額であるから、本件賦課決定処分は適法である。

三  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 裁判官 近藤裕之)

物件目録(一)

一 土地

1 所在   川崎市宮前区土橋二丁目

地番   一一番一三

地目   畑

地積   三五三平方メートル

2 所在   川崎市宮前区土橋二丁目

地番   一六番一七

地目   山林

地積   七九六平方メートル

3 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   二番二五

地目   畑

地積   一一四平方メートル

4 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   二番二六

地目   山林

地積   八二平方メートル

5 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   三番二八

地目   山林

地積   八三〇平方メートル

6 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   三番二九

地目   山林

地積   八三〇平方メートル

7 所在   川崎市宮前区土橋七丁目

地番   二八番五

地目   山林

地積   四六八平方メートル

8 所在   川崎市宮前区土橋七丁目

地番   二八番八

地目   山林

地積   三九八平方メートル

9 所在   川崎市宮前区土橋二丁目

地番   一六番一六

地目   畑

地積   四六九平方メートル

二 建物

1 所在   川崎市宮前区土橋二丁目一六番地一六、同番地一七

家屋番号 一六番一六

種類   スタジオ

構造   鉄筋造陸屋根二階建

床面積  一階 二九九・八七平方メートル

二階 七四・〇九平方メートル

2 所在   川崎市宮前区土橋二丁目一六番地一七

家屋番号 一六番一七

種類   スタジオ

構造   鉄筋造陸屋根二階建

床面積  一階 三八七・一三平方メートル

二階 四二・二三平方メートル

3 所在   川崎市宮前区土橋六丁目二番地二五、同番地二六

家屋番号 二番二五

種類   店舗・共同住宅

構造   鉄筋コンクリート造陸屋根三階建

床面積  一階 九七・七一平方メートル

二階 九三・二二平方メートル

三階 九三・二二平方メートル

三 預金等

1 三和銀行日本橋支店

口座番号 二五一三三八

名義人  柴原健三

預金残高 金一一四万四一四三円

2 三井銀行宮前平支店

口座番号 四〇九〇四三一

名義人  柴原健三

預金残高 金九七万八〇二六円

3 川崎市中央農協宮前平支店

口座番号 〇八六六九七二

名義人  柴原健三

預金残高 金一二六万一一一二円

4 川崎市中央農協宮前平支店

口座番号 〇八六六九八〇

名義人  柴原健三

預金残高 金一五九万七七〇五円

5 川崎中央農協宮前平支店

口座番号 〇八六六九九八

名義人  柴原健三

預金残高 金八一六万一四四四円

6 川崎市中央農協宮前平支店

口座番号 〇八七八三四

名義人  有限会社ネストシバハラ

預金残高 金三四七万五八四八円

7 第一勧業銀行鷺沼支店

口座番号 一〇九九二七六

名義人  柴原健三

預金残高 金一三万三四二〇円

8 川崎市中央農協宮前平支店(納税預金)

口座番号 一五〇〇四〇六

名義人  柴原健三

預金残高 金二二三万四六〇六円

9 川崎市中央農協宮前平支店(定期預金)

口座番号 〇〇二〇〇五〇

名義人  柴原健三

預金残高 金一〇〇万円

10 川崎市中央農協宮前平支店(定期預金)

口座番号 〇〇一〇〇〇〇

名義人  有限会社ネストシバハラ

預金残高 金五〇〇万円

11 川崎市中央農協宮前平支店(定期積立)

口座番号 四八二九三八〇七

名義人  柴原健三

預金残高 金一九六万一二五円

12 川崎市中央農協宮前平支店(定期積立)

口座番号 四八四四五四一五

名義人  柴原健三

預金残高 金一〇〇万円

13 川崎市中央農協宮前平支店(定期積立)

口座番号 四八五九五一一〇

名義人  柴原健三

預金残高 金一〇〇万円

14 川崎市中央農協宮前平支店(定期積立)

口座番号 四八一五九五二九

名義人  柴原健三

預金残高 金五〇〇万円

15 国債

農林中央金庫

名義人  柴原健三

金額   金三〇〇万円

四 リゾートマンション会員権

ジャパントータルクラブ 金二八〇万円

以上(昭和六三年九月一九日現在)

物件目録(二)

一 土地

1 所在   川崎市宮前区土橋二丁目

地番   一一番一三

地目   畑

地積   三五三平方メートル

2 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   二番二五

地目   宅地

地積   一一四平方メートル

3 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   二番二六

地目   山林

地積   八二平方メートル

4 所在   川崎市宮前区土橋六丁目

地番   三番二九

地目   山林

地積   八三〇平方メートル

5 所在   川崎市宮前区土橋七丁目

地番   二八番五

地目   山林

地積   四六八平方メートル

6 所在   川崎市宮前区土橋七丁目

地番   二八番八

地目   山林

地積   三九八平方メートル

二 建物

1 所在   川崎市宮前区土橋六丁目二番地二五、同番地二六

家屋番号 二番二五

種類   店舗・共同住宅

構造   鉄筋コンクリート造陸屋根三階建

床面積  一階 九七・七一平方メートル

二階 九三・二二平方メートル

三階 九三・二二平方メートル

別表一

(1) 課税標準及び税額の計算

〈省略〉

(2) 分離課税の長期譲渡所得の税額計算

〈省略〉

(3) みなし法人所得額等の計算

〈省略〉

別表二 本件土地の時価の計算表

1.本件土地の財産分与時(昭和63年9月19日)の時価は、本件名基準地の価格を基礎として算出した。

2.本件基準地一の標準価格等

〈省略〉

3.本件基準地二の公示価格等

〈省略〉

4.本件土地の財産分与時の時価額の明細

〈省略〉

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